WIB(船内向け自主改善活動)方式認定の仕組みと手続
WIB方式認定の仕組みと当協会が認定を行う際の手続等は、以下のとおりです。
1. 認定の単位及び認定範囲
WIB方式認定は、原則として船舶を対象としています。
2. 認定申込みに係る要件
WIB方式認定は、労働安全衛生マネジメントシステム(以下OSHMSと略す)の実施していることを確認して認定する事です。
(1)評価のために必要なOSHMSの運用実績があること。
具体的には、OSHMS導入後、1回以上PDCAサイクルを回し、システム監査及び事業者によるOSHMSの見直しが終了していることが必要です。
(2)事業者が当協会の免責事項等に同意すること。
認定申込書の裏面に記載されている事項に同意していただく必要があります。
3 認定申込みから認定まで
(1)認定の申込み
事業場が当協会に所定の申込書を提出します。
(2)申込みの受理
担当評価員を決め、マニュアル一式を送付します。
(3)自己評価
会社は、WIB方式のマニュアルに従ってOSHMSの実施状況を自己評価し、その結果を協会に送付します。
(5)評価員による評価
担当者が、事業場のOSHMSがWIB方式の適格基準に適合しているかどうかを書面調査及び実地調査により評価します。書面調査は、当協会の事務局において、事業場から提出された資料により行います。
実地調査は、事業場を訪問して、インタビュー、現場の調査により行います。終了時には、調査結果の概要の説明と、OSHMSの改善に関する助言(該当事項がある場合のみ)を行います。
(6)不適合についての通知
書面調査・実地調査の結果、軽微な不適合事項が見つかった場合には、書面により事業場に通知し、一定の期限(概ね1ヵ月後)までに改善報告書を提出するよう依頼します。改善報告書が提出され、改善が確認できた場合には、それを評価結果に反映させます。
(7)認定審査会における審査及び判定
担当評価員が評価結果をとりまとめた後、WIB方式適格OSHMS認定審査会において、評価が適正に行われたかどうかの審査と認定の可否についての判定を行います。同委員会は、OSHMSや労働安全衛生についての専門的知識を有する外部の有識者及び当協会の役職により構成され、適時開催されます。
(8)認定
認定審査会が認定をしてよいと判定したときは、当協会として認定し、後日、事業場に認定証(写真1)を交付します。認定の有効期間は、認定した日から3年間です。
認定された安全衛生計画などは原則として当協会のホームページで公開いたします。
また、認定後1ヵ月程度までの間に、事業場に評価結果報告書を送付します。
「安全衛生マネジメントシステム」の中で自主改善の視点によるリスクアセスメントを船内に普及させめるために、短時間で使いやすいツールとしてWIBを開発しました。
従来のWISE方式の自主改善活動ではトレーナー(指導者)は、3日間の教育プログラム等を受ける必要がありますが、船内での少ない人数による運営、交代制勤務形態を考えて、WIBでは短時間(初回は120分程度、2回目からは60分~90分程度)で活動できるプログラムを考えました。
WIBでは、船社側は安全衛生目標や安全衛生計画を作成して、安全衛生に関する教育・研修をする事が必要です。加えて、船内での危険要因の特定・評価(リスクアセスメント)を会社側が改善活動のための人件費、および必要な道具、資材の提供と、実施状況や効果の確認が必要です。会社の方針、安全衛生計画などの支援がなければ、いくら現場で活動しても、現場で継続的に行うことができず、職場の労働安全衛生を進めるには、会社と船員が車の両輪のように、WIBを理解し、協力し合あって改善を進めていきます。
WIB指導員養成講習会の開催
1)筆者によりWIBの基本的な考え方、WIBの具体的な進め方(よい改善事例の選び方、チェックリストの使用方法、改善事例の共有方法など)、船内労働安全衛生マネジメントシステムについて、受講者が理解し易く、効率・効果的に習得できます。よい優良改善事例を示したシートを使用します。
2)基本的には、講習会は、座学の後に、船舶内において実習を行ない、その場で改善案を提案します。
現在WIBの商船、旅客船向けプログラムを国土交通省が、漁船向けプログラムを水産庁が実施しています。
① 貨物船、旅客船向けWIBについて(国土交通省補助事業)
平成25年から開始した、第10次船員災害防止基本計画に組み込まれて、初年度は調査事業、2年度目は検討事業が行われ、3年度目の2015年より普及事業が行われます。
WIBは船内労働安全衛生マネジメントシステムを推進するための方法として紹介されています。
具体的な内容は、平成27年度船員災害防止実施計画で紹介されています。
「死傷災害の防止に向けた取組の一環として、船内での危険要因の特定・評価(リスクアセスメント)、安全衛生目標や安全衛生計画の作成・実施、効果の確認と更なる改善措置の実施等を継続的に行う船内労働安全衛生マネジメントシステムの導入を引き続き推進するとともに、船内労働安全衛生マネジメントシステムの導入が難しい船舶所有者については、より簡単にできる船内向け自主改善活動(以下、「WIBB」という。)の導入を推進する。国は、WIBの普及を図るため、WIB指導員養成のための講習会を実施する等、普及促進に努める。」
国土交通省の平成27年度の海事レポートの中でWIBは以下のように紹介されています。
「○船内向け自主改善活動(WIB)
WIB(Work Improvement on Board)とは、船員本人のチェックリストによる船点検を通じて、各船員が船内の危険箇所・問題点等を認識し、その対策を講ずるとともに、安全意識の向上を図るもの。」
② 漁業向けWIB(水産庁補助事業)
水産庁補助事業「安全な漁業労働環境確保事業」漁業カイゼン講習会では、漁業の労働環境のカイゼンや海難の未然防止などの知識を持った「安全推進員」を養成しています。その中心に、参加型自主改善活動(Participatory Action-Oriented Training 以下POATという。)をベースにした、WIB船内自主改善活動として、良い改善事例の選択、アクション型チェックリストと改善の使い方シートの講習、可能な時は船の点検を行っています。事業の内容は平成25年の「水産の動向(水産白書)」では以下のように紹介されています。
「国では、平成25(2013)年から、漁船の航行や操業時の安全性に関する知識や、漁労作業時の危険箇所を事前に特定し対策を講ずる「参加型自主改善活動」に関する知識を身につけた者を「安全推進員」として養成し、漁業者が自ら安全な漁業労働環境を構築することを支援しています」。
また、内閣府の交通安全白書でも、この事業を以下のように紹介されています。
「水産庁では,漁船の海難や海中転落事故に対する安全対策の強化を図るため,漁船の労働環境の改善や海難の未然防止等について知識を有する「安全推進員」を養成し,漁業労働環境の向上等を通じて海難事故の減少を図るとともに,ライフジャケット着用推進のための普及啓発を行うなど,所要の施策を講じました。」
紹介記事
日本海難防止協会情報誌『海と安全』「漁船の安全対策の取り組み」と「小型船の自主改善活動について」
船員災害防止協会機関誌『船員と災害防止』「WIB(船内向け自主改善活動)について」
漁船保険中央会『波濤』では「安全推進員講習会の効果について」
JF全漁連発行『くみあい』では「漁業の安全の現状と今後の取り組みについて」
全日本海員組合発行の機関誌「海員」では「船員の労働環境と自主改善活動の取り組み」